任務のために、各自衛官がそれぞれのお仕事を担当
「自衛官のお仕事」といえば……みなさんは何を思い浮かべるでしょうか?
自衛隊の任務は、「日本を守ること」です。
〇どこかから日本が攻撃されたときに、日本を守る
〇大きな災害が起きたときに、救助や支援活動をする
〇国際的な平和に貢献するために、海外で救助や支援活動をする
自衛隊は、こういったことを任務としています。そして各自衛官は、このような任務のために、それぞれの「お仕事」をしています。
飛行機やヘリコプターのパイロット、船の運航、戦車のドライバー……このようなお仕事は比較的有名ですが、そのほかにもたくさんのお仕事があります。
「そんなお仕事をしているの?自衛官が?」とちょっとびっくりするようなお仕事もあります。
今回は、婚活相手の自衛官たちが実は担当しているかもしれない、ちょっと意外なお仕事をご紹介します。
パイロットだけじゃない!航空自衛隊のお仕事
「お仕事は?」
「航空自衛隊です」
「じゃあパイロットなんですね!」
この会話は「航空自衛官あるある」です。「航空自衛隊=飛行機=パイロット」というイメージを持たれがちなので、航空自衛官さんは「じゃあパイロットなんですね!」とよく言われるそうです。
でも、航空自衛官のお仕事はパイロットだけではありません。飛行機が安全に飛ぶためには、機体を整備する人が必要です。気象を観測する人、空の交通整理をする管制の人も必要です。燃料を補給する人がいなければまず飛行機は飛べませんし、飛行機には無線などの機器も欠かせません。滑走路や基地のライフラインを管理・整備する人もいなくては困ります。そして万が一の事故に備えた消防を担当する人、飛行機が滑走路で止まれなくなったときにワイヤーで止める人……「飛行機」のイメージが強い航空自衛隊ですが、その飛行機にまつわるお仕事だけでもこんなにたくさんあります。
職種・職域は、陸・海・空で約80!
陸・海・空によって少し違いますが、こういったお仕事の種類は「職種」「職域」と呼ばれています。
例えば、パイロットの職種の名前は「飛行」、滑走路や基地のライフラインを担当する職域は「施設」、無線を担当するのは「通信」です。
職域の数は、航空自衛隊だけで約30。海上自衛隊にも約30の、そして陸上自衛隊には16の職種・職域があります。
たくさんの人がそれぞれの担当のエキスパートとなり、みんなで日本を守っている……自衛隊は、そういう仕組みで成り立っています。
職種の選択……ある陸上自衛官の場合
と、ここである友人のお話。
友人は、お付き合いしていた彼と数年前に結婚しました。そして結婚後に、ご主人が転職。ご主人は陸上自衛隊を志望し、見事合格、陸上自衛官となりました。
入隊後、ご主人は3カ月の訓練を受けました。そしてこの3カ月間の訓練が終わりに近づいてきたころ、大きな選択を迫られました。それは、「職種の選択」。
自分がどんな職種につくのか……これは、希望することができます。実際の配属は、人数の調整や個人の適正を踏まえて……となるので、全員が希望通りにいくとは限りませんが、ご主人も希望を出すことになりました。
そして、奥さんである友人から相談を受けました。
旦那に選んでほしい職種は……?
「旦那がどの職種がいいか迷ってるんだけど、どれがいいと思う?」
「旦那さんはどこがいいとか希望あるの?」
「旦那は普通科か施設科、通信科で迷ってるんだよねー」
「いいじゃん。どれもやりがいのあるお仕事だと思うよ」
「私は通信科はどう?って言ってるんだけど」
「なんで?」
「旦那、すごいパソコン得意なんだよ。だから通信科って良くない?」
「んーーーーパソコン得意と通信科はあんま関係ないかな……」
「そうなの?だったら普通科!やっぱ普通科がいいと思うんだ!」
「なんで普通科?」
「だって、フツーが一番じゃん!高校でも普通科に行っとくのが無難でしょ?」
「いや、自衛隊の普通科は全然フツーじゃないんだよーーーーーー!!」
人と人をつなぐ、通信科のお仕事
さて、この友人との会話。自衛隊にあまりなじみのない方には、ちんぷんかんぷんなお話だと思います。ですがこの会話、自衛官には鉄板で大ウケしてもらえます。……ということで、解説。
まず、「通信科」。上記の航空自衛隊の職域でも少し触れましたが、「通信」は無線や有線などで、人と人、部隊と部隊をつなぐ通信を担当するお仕事です。
遠くにいる人に指示をしたり、お願いごとをしたり……というとき、一般的には電話やメールを使うと思います。が、自衛隊で一般的な携帯電話を使うと傍受されたりする危険性があるので、専門の通信機器を使います。
陸上自衛隊の「通信科」の場合、山をひたすら歩いて有線を張り巡らせたりします。なかなか地味で重労働です。でも、こういった訓練を日ごろからやっているので、地震や津波、台風なんかで電話が使えなくなった地域でも、救助活動のための拠点に有線を張って迅速な災害対処活動ができたりします。
施設科は橋や建物で被災地・世界に貢献!
そして「施設科」。友人のご主人は、最終的にこの施設科に配属となりました。ご主人の性格にも合っていたようで、バリバリお仕事をして先輩や上司の信頼も厚く、とてもがんばっているようです。
施設科はざっくりいうと「土木建築屋さん」です。敵から発見されないように、地中に穴を掘ってかっこいい秘密基地のようなものを作ったりします。津波や台風のような災害で橋が崩落したときに、自衛隊がパパパーっと臨時の橋を架けている様子をテレビで見たことがある方もいらっしゃると思いますが、これも施設科の隊員さんが担当しています。
海外派遣では、災害の被災地、内戦で被害を受けた地域などに、自衛隊が学校や病院を建設したりしていますが、これも施設科がやっています。ので、施設科の隊員さんは海外派遣の可能性が他よりちょっと高いかな……と、これは私の個人的な実感です。
普通じゃない普通科。は、「歩」。
最後に「普通科」。友人は、
「だって、フツーが一番じゃん!高校でも普通科に行っとくのが無難でしょ?」
と壮大な勘違いをしていましたが……でもこれ、友人だけでなくほとんどの人が思ってしまうことだと思います。偉そうにこうやって書いてる私も、ほんの10年前までは同じでした。
「普通科」なんて名前がついてるので、「ああ、フツーなんだね」と思ってしまいますが、普通科はちっとも「普通」ではありません。これ、友人にもなかなか理解してもらえませんでした。
「なんで?『普通科』でしょ?『普通』じゃないの?どんなことするの?」
「えーとね、自衛隊では『普通科』って名前だけど、旧日本軍や米軍だと『歩兵』なんだ」
「ホヘイ?」
「えーっと、将棋で言ったら『歩』」
「私将棋知らない」
「そうか……」
普通科……それは生身を武器に戦う人たち
陸上自衛隊の戦闘職種には、
〇戦車・偵察の職種
〇大砲の職種
があります。これらは、戦車や大砲などを使って戦う職種です。そして戦闘職種にはもう一つ
〇生身の職種
があります。これが「普通科」と呼ばれている職種です。「戦車」でも「大砲」でもなく「生身」。身ひとつ。旧軍ではこの生身の職種を「歩く人=歩兵」という言葉で表していました。
戦車や大砲を使わない、生身。なので、普通科職種の隊員は「自分の体」を「武器」にしなくてはいけません。……ということは?……はい、「ムッキムキ」です。鍛え方がハンパではありません。といっても、ボディビルのような太マッチョのような人はあまりおらず、しなやかで使える筋肉を蓄えた「鋼マッチョ」といった感じです。服を着ていればムッキムキはあまり感じません。
あ、でも腕は丸太のように太いです。もし、普通科職種の隊員さんにお会いすることがあったら、腕を掴ませてもらってみてください。ほんと、びっくりしますよ。
「普通」から「特別」まで。職種・職域はまだまだあります
普通じゃない「普通科」。これ、「普通」なんて言葉を使っているから誤解が生まれるんだよなぁ……と私も常々思っているんですが……。戦車や大砲などの「特別」なものを使わないから「普通」なのかな?
あ、「生身」とはいえ、小銃や機関銃といった小型の武器や移動用の装甲車は普通科も使います。ので、本当の「身ひとつ」では戦いませんよ。
……ということで、今回は自衛隊にたくさんある「職種・職域」のうち、ほんの一部をご紹介しました。まだまだ職種・職域はたくさんありますので、これからも少しずつご紹介したいと思います。
これから出会う自衛官さんがどんなお仕事をしているのか……ぜひ、今後の婚活にお役立てください!