理解を妨げる自衛隊用語
前回の
>>自衛官はどんな女の子とお付き合いしたい?
では、「自衛官というお仕事はなかなか理解しにくいんだけど、自衛官は彼女に『仕事を理解して欲しい』と思っている」というお話をしました。
自衛官というお仕事がなぜなかなか理解しにくいのか……その理由のひとつに、「自衛隊用語の難しさ」があると思います。
国防・安全保障関連のニュースを聞いていても、特殊な用語がたくさん登場して「分かりにくい」と感じる方はたくさんいらっしゃると思いますし、自衛隊の内部でもたくさんの専門用語が飛び交っていて、自衛官自身も、私たちからすれば「宇宙語」としか感じられないような言葉をよく使います。
「りょー」をずっと昔から使っていた自衛隊
ナゾだらけの自衛隊用語。ですが、意外と私たちとの「共通語」もあったりします。特に、みなさんのような若い方々にはより身近に感じる「共通語」だと思います。
例えば……LINEなどでやり取りしていて、「了解」と伝えるとき。「了解」を略して「りょー」と送信することがありますよね。
これ、実は自衛隊用語でもあるんです。「了解」「了解しました」と言うべきときに、「了解」を略して「了」と言うことがあります。場合によっては、「りょ」と素っ気なく言うことも。
なぜ、自衛隊では「了解」を略して「了」と言うのか。それは、「素早く伝えるため」です。「了解」と「了」では1秒も違わないのですが、そのほんのわずかな時間が任務に影響することもあるんです。
例えば、無線。自衛隊では重要な任務では携帯電話やスマホを使わずに、無線通信で連絡をし合います。携帯電話やスマホでの会話は傍受される危険性があるからです。
しかし、無線通信も傍受される可能性はゼロではありません。無線は長く通信していればそれだけ傍受の危険性が上がるため、ほんのわずかな差ではありますが、「了解」ではなく「了」という言葉を使っています。
かわいい?!チュータくん
ひと言で、「分かったよ」という意思が伝わる「了」「りょ」。とっても便利なので、無線を使っていないとき、必要のないときでも「了」「りょ」で済ます自衛官もいます。
みなさんがLINEなどで「りょー」と送信するのも、簡単な操作で意思が伝えられるからですよね。自衛隊でも、同じような理由から略語をよく使っていて、「了」以外にもたくさんの略語があります。
例えば、「チュータ」という言葉。私がこの言葉を初めて聞いたのは、5年ほど前です。自衛官さんたちが、
「今日、チュータ来るの?」
「チュータ来るよ」
とチュータチュータ言い合っていて、「チュータ?かわいいネズミのゆるキャラか何かかな?」と思っていたんですが、よくよく聞いてみると「中距離多目的誘導弾」の略。「全然かわいくない……」とがっかりしました(笑)
「コウキ」「ヒトマル」……たくさんの略語が
自衛隊のイベントに行くと、装備品の展示が行われていることがよくあります。普段、自衛隊や安全保障関連に興味がないと、展示されている装備品を見ても何をするものかサッパリ分からず、似たような物がたくさんあってどう違うのかよく分からず、説明を聞いても「???」が飛び交うばかりだったりすると思いますが、さらに説明する自衛官さんが略語を使ったりするのでちんぷんかんぷんさ加減に拍車がかかります。
イベントでは、「高機動車」という車が展示されることがよくあるのですが、自衛官たちは略して「コウキ」と呼んでいます。
また、戦車が展示されることもあるのですが、「10式戦車」「90式戦車」はそれぞれ「ヒトマル」「キュウマル」と略して呼ばれています。「ヒトマル」「キュウマル」なんて言われても、知らなければそれが戦車を指してるなんて分からないですよね。
そしてややこしさを増しているのが、数字の読み方。自衛隊では、「0」「1」を「ゼロ」「イチ」と読まずに「マル」「ヒト」と読むので(海上自衛隊では「2」も「フタ」と読みます)、「10」は「ヒトマル」、「90」は「キュウマル」と言います。
略語は覚えられなくても、その存在だけ頭に入れておきましょう!
こういった、自衛隊的な略語はとてもたくさんあって、自衛隊に10年以上関わっている私でも分からない言葉がまだまだたくさんあります。すべてを覚えるなんて、はっきり言って無理です。
ですので、「略語を覚えよう」とがんばらなくても、「そういった略語がたくさんあって、自衛官がよく使っている」ということだけでも理解しておけば、混乱は減ってきます。
もし、自衛官たちがなにかナゾの言葉をナチュラルに口にしたら、「それ、なんですか?」と遠慮せずに聞いてみてください。自衛官本人たちは何の悪気もなく、ついつい普段のクセで略語を使っているだけですので、「ヒトマルとは10式戦車のことです。戦車の中でも最新型で……」といったように分かりやすく教えてくれると思いますよ!